腹落ちする脚本論ってあんまりなくない?
昔からプロットというものが書けない。雰囲気で小説を書いてきた。 しかし流石に昔のような体力もないのでプロットの支えがないとつらい。
プロット論で良書と言われているものは一通り読んだ。
が、どうにも腑に落ちない。
読んだとおりに書いてもなんだか違う気がして息苦しさを感じていた。
三幕構成、キャラクターの好感が必要ならホーリー・グレネード[1]はどうなるんだ?
やっと「納得できる脚本論」に出会った感
そう思っていたけどこの本は腑に落ちた。ポイントは、軸がしっかりしていてブレないところ。
「自分語り」や「売れ筋狙い」型だけでなく、全ての脚本家は、ストーリーと人生の関係を理解しなくてはならない。ストーリーは人生の隠喩である。
ロバート・マッキー 『ストーリー ロバート・マッキーが教える物語の基本と原則』 (フィルムアート社, 2018) Kindle版 位置523
ストーリーは人生の隠喩。 この本はこの言葉・概念に一貫されていてブレない。だから全編説得力がある。
内容は脚本家の中川千英子先生がnoteに丁寧に纏めてくださっている ので、ここでは目から鱗ポイントだけ並べておこう。
プロットの種類
プロットの種類として以下の3つが挙げられている。
- アークプロット(ストーリーが提示した疑問のすべてに答えが与えられるもの)
- ミニプロット(どこか未解決のままで終わるもの)
- アンチプロット・ノンプロット(不条理・プロットがない)
なんでプロットの型自体が分かれるか? それは人生観の違いにある。
- 大抵の人は、「人生に意味がある、答えは全て与えられる」と考えたいからアークプロットを好む。
- 逆に「人生は不条理だ」というテーマを推したい場合は、マイナーでもアンチプロットの方が都合がいい。
実は、冒頭に挙げた『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』は「アンチプロット・ノンプロット」に分類されている。なるほどね。
ストーリー設計
よく脚本論として語られる三幕構成だが、この本は3幕でも5幕でもいいと言う。三幕構成なんていらんかったんや!
……何幕でもいいのだが、ストーリーの段階自体は以下の5段階に分けられる。
- 契機事件
- 段階的な混乱
- 重大局面
- クライマックス
- 解決
このうち契機事件は、主人公の人生のバランスをプラスかマイナスに大きく動かすもので、主人公はバランスを取り戻すために物語を進めていくことになる。 契機事件が遅すぎてはいけない。ダレる。
「動く」シーンの作り方
人生のバランスのプラマイと言ったが、個別のシーンを作るときも、シーンの最初と最後で価値基準を逆にすることで「動く」シーンになる。 例えば、「生命」という価値に注目した場合、「シーンの最初で無職(生命:マイナス)だった者が、シーンの最後に職を得る(生命:プラス)」など。
単にご都合主義でプラマイが動いただけでは観客の心が離れてしまう。 「キャラクターの予想した展開」と「実際の展開」にギャップを作り、キャラクターがそこを乗り越えていかねばならないようにする。
キャラクターの立て方
キャラクターには、外見・肩書・表面上の性格……といったガワの部分と、命がかかった時に見せる本質的な部分とがあるが、
- ガワと本質を逆にする
- さらに、ガワ vs 本質の対立する組を1キャラクターに何個も載せる
ことにより、深みのあるキャラクターを作ることができる。 サブキャラでやりすぎると主役を食うけど。
葛藤の作り方
善と悪の間で葛藤する人間は稀だ。大抵の人間はそういう場面では善をとる。(言われてみれば当たり前だ……) だから、善と善、悪と悪の間で葛藤させることで、ちゃんとした葛藤になる。
まとめ
つまり、ストーリーが人生の隠喩なら、スランプの際には自分の人生観に向き合えということかもしれない。
仕事でも雑務でもなく「書きたいものを書く」ことは、人生を書くってことかもしれない。よし、書くぞ。
脚注
- 『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のこと。低予算だけど面白いから見て。[↩]

